反資本主義・生活デザイン課

やりがいのない仕事を逃れ、芸術的に生きるための知と実践。

脱・広告したい!

 

 こんにちは。反資本主義・生活デザイン課の風見好日(カザミ コウジツ)です。

普段は某国立大学で哲学の研究をしています。今から70, 80年前くらいのフランスの哲学を調査していますと、マルクス主義という思想がキーワードになってきます。当時のフランスの知識人は誰も彼もマルクス主義者でした。

 

マルクス主義、つまり反資本主義の思想です。もちろん、現在に至るまでの間にその思想も色々な受け取られ方をして、変化してきました。ソ連やかつての中国のように、恐怖政治に堕落してしまったものもありました。しかし、いやだからこそ、現代を生きる私たちがマルクス主義を理解するためには、大昔の原点にまでさかのぼり、自分で判断しなければなりません。

その成果の一つが斎藤幸平『人新生の「資本論」』でしょう。私がブログを始めるきっかけになった本の一つです。

今度、この本を紹介する記事も書きたいと思います。

shinsho.shueisha.co.jp

 

目次

 

広告であふれかえっている現代社

 ところで、もちろん日本にも数多くのマルクス主義思想家がいました。その一人が幸徳秋水〔1871-1911〕です。彼は日本を代表する社会運動家でしたが、当時の大日本帝国が国内のマルクス主義者たちを弾圧するために、彼らが天皇に反逆したという罪をでっちあげ、40歳の若さで処刑されてしまいました。日露戦争の後、第一次世界大戦の前の頃です。

彼が初心者にマルクス主義社会主義)を紹介するために書いた『社会主義神髄』(1903)の中に「社会主義と商業広告」という章があり、「資本主義社会はどうして広告であふれかえっているのか?」という疑問に答えてくれます。

dl.ndl.go.jp

今でこそ身の回りの至る所に商業広告が張り付いており、商業広告のためにお金と時間を払い、商業広告によって日々の選択を形づくられ、そのことが当たり前になって気づくこともできなくなっているほどですが、秋水によれば、これは日本では明治維新(-1889)以後のことであるということが分かります。

維新後三十年間わが日本の社会において、およそ進歩発達したといっても、商業広告ほど進歩発達したものはあるまい。(133頁*1

花の大江戸は、忽然として化して広告の東京となった(134頁)

 別に、広告が悪だと言っているのではありません。また、近代化以前の武士の社会に戻れと言っているのでもありません。新たな事業やサービス、人のための活動は、人々に知られなければ意味がない。本来広告とは、それを人々に知ってもらうための手段です。しかし、資本主義社会では、広告の性格が一変します。広告はサービスを知ってもらうための手段ではなく、それ自体が果てしない競争の種になるのです。つまり、資本主義社会では一つの会社が他の会社と客を奪い合う。少しでも多くの客を自分のサービスに誘導するために、他社よりも多くの広告を、目立つ広告を、と競争しあうのです。これは国家間の軍拡競争と同じだ、と秋水は言っています。その結果、もともとは手段であった広告のために大量のお金と人間が投じられ、都市は広告に覆いつくされることになります。

秋水によれば、資本主義社会における広告の害は3つあります(136-138頁)。

①自然や景観の美を著しく損なうこと

②競争が激しくなるほど、道徳や品性の無い広告、猥褻な広告が増えること

③広告競争のために莫大な金額と労働力が浪費されること

これは、現代を生きる私たちにもよくわかることでしょう。特に③について言えば、私たちがスーパーで買う派手なパッケージのシリアルなんかは、内容物の値段に対して広告費用が10倍以上かかっていると言われています*2私たちは普段、自分たちの食べ物のためにではなく、ましてやそれを生産した人たちのためにではなく、広告の競争のためにそれだけのお金を払っているわけですね。

 

広告が無いブログにしたいけど...

 なので、というか、わざわざ以上のような問題を考えなくても、私はもともと商業広告が嫌いなのですが(ちっとも美しくないので)、なにはともあれ、私がブログを始めようと思ったとき、読む人がうるさい広告に邪魔されないようなブログにしたいと思いました。それに、ブログに広告が無いことは、アフィリエイト*3が溢れる現代のブログの胡散臭さも取っ払って、私のブログが決して営利目的ではないことの何よりの証明になりますしね。それで色々まとめサイトを見て...最初の候補になったのは、livedoorブログとBloggerGoogle)の2つでした。

なぜlivedoorにしなかったのか?

 最初は「広告ナシっていいじゃん」と思ったのですが、反資本主義・生活デザイン課たる者、自分がやるブログ自体のサービス提供元の企業の実態を少しでも知っておこうと思い、調べることにしたのです。そしたらlivedoorは思っていたよりもかなり複雑な経歴の企業なのですが、ザっとまとめると、こんな感じです↓

  • 元の母体の一つは創業:堀江貴文
  • 2004年:堀江ふくむ取締役らが証券取引法違反で逮捕
  • 2012年:NHN(LINE, NAVERなど)の子会社化
  • 2022年:みんかぶ ジ・インフォノイドに売却

確かにブログサービスとしてはかなり優れていて、積極的な執筆や閲覧が得られるかもしれないのですが、やはり前歴が少し黒い。そして今年から「みんかぶ」という会社に売却されているのですが、こちらの会社は、株式市場の相場予測の情報交換や、AIを用いた記事の自動生成などを行っているらしく、私の立場ややりたいことともかけ離れる気がしました。

なぜBloggerにしなかったのか?

 こちらはもう少し単純な理由です。現在Bloggerを運営しているGoogleには普段からお世話になっているので、最初はそちらでブログを開設しようと思ったのですが、少し調べるうちに、次のような問題点が分かってきました↓

  • Googleは過去の下位サービスと同様、いつでもBloggerサービスを終了させる可能性があり、その兆しもある
  • 日本語ではレイアウトに限界がある
  • はてなのような、ブログ間コミュニティが無い

Bloggerを少し触ってみたところ、レイアウトやデザイン面はけっこう良かったのですが、やはり日本語対応フォントが無く、いじっている段階で不具合が出てきてしまう。それに、はてなのように、ブログ全体が属しているポータルが存在しないのも、色んな人に読んでもらいたい私にとっては痛いところ。何より、始めたばかりで急にサービス終了されてはたまりません。

 

脱・広告したい!

 なので、現在はコチラのはてなブログを利用していますが、ここにはどうしても広告がついてしまいます。読者の皆様にはご不便をおかけします。はてなブログの有料プランや、Wordpressのサーバー保有に切り替えれば、広告のないブログをお届けできるようになります。しかし、私も決して裕福な生活を送っているわけではなく、定期支出を簡単に増やすこともできません。

 今後、何らかの形で広告の無いコンテンツをお届けできるようになることが、現在の私の目標の一つです。それを実現するためには、ぜひ皆様に応援していただきたいと思っております。寄付を募っているわけではありません。とりあえず、私の書いたものを誰か一人でも多くの人が読んでくれている、という手ごたえがあれば、もう少し、このブログ活動に力を注ぐこともできると思います。

 これから、どうぞよろしくお願いします。

 

*1:幸徳秋水社会主義神髄』国立国会図書館所蔵,ゴマブックス株式会社,2014.ただし、適宜現代仮名遣いに直して引用。

*2:ポール・ロバーツ『食の終焉』神保哲生訳,ダイヤモンド社,2012.

www.diamond.co.jp

*3:企業の広告を表示し、読者を誘導することで、企業から報酬を得るブロガービジネスのこと